あなたはご存知?「カンジダ・アウリス」最強真菌感染症

実は「新型コロナ」の影に隠れて別物の菌(真菌・カビ菌)が猛威を見せる気配。
真菌といえば代表的なものは「白癬菌による水虫」である。
他に背中にできる「マラセチア毛包炎」も真菌が原因である。
その真菌仲間の「カンジダ・アウリス」がインド方面や米国で猛威を振るっているらしい。
最近、新型コロナが下火になり海外からの入国者が増加している中、このような感染症真菌が過去最強の状態で現れている。
日本も新型コロナが下火だと安心しては居られない状況になってきた。

 

カンジダ・アウリス」は4種類ほど「日本型」「インド型」「南アフリカ型」「南アメリカ型」あるらしいが、問題なのは「インド型」らしい。
抗真菌薬への耐性があり、現在のほとんどの薬は効かないらしい。

 

カンジダ血症の死亡率は?
菌血症における分離頻度が高いことに加え、カンジダ血症の致死率が30~50%程度と高いことからは、カンジダ属は黄色ブドウ球菌等と同様、極めて注視すべき血流感染症の原因微生物(真菌)である。

 

 

 


https://www.niph.go.jp/h-crisis/archives/395188/
カンジダ・アウリス(Candida auris)感染症について(2024年2月13日)
感染症エクスプレス@厚労省】Vol.506(2024年2月9日)
皆さまは、海外では多剤耐性カンジダ・アウリス(Candida auris)によるアウトブレイク事例が多数報告されているのをご存じでしょうか。
   カンジダ・アウリスは、2009年に本邦より初めて報告されたカンジダ属病原菌種であり、現在は世界各国で感染症例の発生があります。
   本邦で報告されているのは主に抗真菌薬への感受性の高い非侵襲性のカンジダ・アウリスですが、インド・アフリカ・米国・欧州など多くの国では本邦とは異なる系統の多剤耐性株による侵襲性感染症となっています。
   カンジダ・アウリスは薬剤耐性(AMR)対策の観点から非常に重要な真菌種であり、複数国の分離株の薬剤感受性を調べた研究では93%がフルコナゾール耐性であり、35%がアムホテリシンB耐性、41%が2系統以上の抗真菌薬に耐性があり、臨床現場で使える全ての抗真菌薬に耐性を示す報告もありました(1)。
   カンジダ・アウリスは高い薬剤耐性に加えて、感染制御の困難さから、世界保健機関(WHO)は真菌優先病原体リストの1つとして位置づけています(2)。
   昨年、国内初となる海外株による真菌血症による死亡例が報告されており、今後国内での事例の発生に注意が必要です。
  カンジダ・アウリスによる感染症を疑った場合は、厚生労働省国立感染症研究所等のホームページ等を活用しつつ、最寄りの保健所にご相談下さい。

 

 

 

 

https://medical-tribune.co.jp/kenko100/articles/190808529598/


カンジダ・アウリス(日本で分離された株の顕微鏡像)

 

新発見の恐るべき真菌、カンジダ・アウリス
2019年08月08日 06:00
真菌とはカビのこと。真菌が起こす病気を真菌症と呼び、最も有名なものは白癬菌による水虫だが、患部が皮膚にとどまらず全身の感染症を生じる例もある。
 カンジダ・アウリス(Candida auris)は、2009年に日本から報告された新しい真菌である。70歳の女性の耳だれから見つかったため、ラテン語で耳を意味するaurisと名付けられた。発見当初は高齢者で外耳道炎を起こす程度で、病原性は高くないと思われていたが、今やこの真菌が各国の病院や老人施設で死亡例を含む集団感染を引き起こし、世界的流行(パンデミックと呼ばれる)となっている。発見者である帝京大学大学院医真菌学教授の槇村浩一氏に話を聞いた。

 

 槇村氏は、病気を引き起こす真菌を専門とする日本では数少ない医真菌学者だ。「カンジダ属の代表であり、カンジダ症の最大の原因となるカンジダ・アルビカンスは丸くて大きいが、日本で見つかるアウリスは小さくて形はいびつだ(図1)」と言う。アウリスが重篤な全身感染症の原因となることを、初めて報告したのは韓国である。2011年、アウリスが血液を介して全身に広がる敗血症の原因となった3例を見つけたのだ。その後の拡散は速やかで、インド、パキスタン南アフリカベネズエラ、英国、米国、クウェートイスラエル、コロンビア、中国などから続々と報告されるようになった。

 

アウリスは発見も消毒も治療も困難
 アウリスには厄介な問題点が幾つもある。まず、免疫機能の低下した例において重症の全身性感染症を引き起こす点だ。死亡率は30〜40%と推定されている。その最大の理由は、抗真菌薬の効かない菌が多いこと。アウリスの9割は最もよく使われる抗真菌薬のフルコナゾールに耐性を示し、5割は複数の抗真菌薬が効かない多剤耐性、4%はどの薬も効かないといわれている。

第二に、菌種の特定が困難な点が挙げられる。この真菌は新種であるため、従来の検査法では見つけることができない。アウリスを意識して特殊な方法を取らないと、見つからないのである。発見の遅れは、治療の遅れ、拡散防止の遅れに直結する。槇村氏は、大学にカンジダ・アウリス・レファレンスセンターを立ち上げた。怪しい真菌を送ってもらえれば、同定や分析を引き受けるという。
 第三の問題点は、環境に定着しやすく消毒が困難な点だ。今年(2019年)4月、ニューヨーク・タイムズに掲載された記事によると、ブルックリンのマウント・サイナイ病院でアウリスに感染した高齢の男性が亡くなったが、病室の至るところにこの菌が残っており、病院は根絶のため「天井やタイルの一部を剝がした!」という。にわかに信じ難い話だが、アウリスはそうした環境でも数週間は生きられることが確認されているという。

 

日本もアウトブレイク対策を怠るな

日本では強い病原性を示さなかったアウリスが、海外で多くの死者を出しているのはなぜか。槇村氏は、遺伝子型の違いを指摘する。米疾病対策センター(CDC)がゲノムシークエンスという方法で詳細に分析したところ、アウリスには4つのタイプがあることが分かった。東アジア株、インド株、南アフリカ株、南米株である。その違いは大きく、病原性や薬剤耐性にも影響を与えている。
 日本や韓国の東アジア株は、病原性は低く、抗真菌薬が比較的効果を発揮する。これに対してインド株は、致命率も耐性率も高い。英国でも米国でも多くの施設でアウリスの院内感染が発生しているが、南アフリカ株が主体の英国では今のところ死者は出ていない。これに対し米国では、州によって異なるもののインド株が多いとされ、死亡例も発生しているという。
 米国での感染例に関しては、最近、インドや南アフリカ共和国ベネズエラなどで医療機関に滞在した人が関与しているとの報告がある(図2)。となると、気になるのが中国で昨年、インド株によるアウトブレイクが起きた点だ。中国人観光客の増加や医療ツーリズムの流行を考えると、日本でのアウリスのアウトブレイクは間近に迫っていると同氏は指摘する。

カンジダ・アウリスの国際的流行状況(2019年5月末まで)

(米疾病対策センター公式サイトより改変)

アウトブレイクが起き、死者が出てから大騒ぎするのではなく、今できる準備をしておこう」と呼びかける。大事なのは、高病原性のアウリスが国内に最初に現れたとき、そこで封じ込めること。CDCの真菌部門の責任者であるチラー氏は、「アウリスは一度、環境に定着してしまうと本当に大変。最初に抑え込むべきだ」と語ったという。そのためには、まず、医療従事者に対する啓発を進めること、そしてガイドラインを整備し、いざというときへの備えを固めておくべきだと、同氏は提言している。

 

 

 

 

https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2619-related-articles/related-articles-528/12531-528r04.html


NIID 国立感染症研究所
PUBLISHED: 2024年2月27日

国内におけるCandida aurisの施設内アウトブレイク対応の備え
IASR Vol. 45 p22-23: 2024年2月号

 

Candida auris(C. auris カンジダ・アウリス)は血流感染症等の侵襲性感染症を起こすこと, 抗真菌薬への耐性が多く認められ, 感染症を起こすと治療が困難であり致命率が高いこと, 施設内感染の発生やその感染制御が困難であること, から国際的に問題となっている真菌である1,2)。

近年諸外国において急速な感染例の拡大がみられており, 医療機関のみならず人工呼吸器に対応する介護施設等においてもアウトブレイク事例が複数報告されている3)。本稿では, 今後発生が懸念される施設内アウトブレイクに備えた国内の体制と対応について紹介する。

 

国内の発生状況と報告体制
2009年に世界で初めて非侵襲性のC. aurisが国内で報告された4)。その後, 2020年に国内では確認されていなかったcladeⅠによる侵襲性感染症により死亡した症例が2023年に論文報告された5)。これを受け, 国内発生状況を把握するため, 厚生労働省厚労省)は自治体へ事務連絡6)を発出し, C. aurisによる感染が疑われる, あるいは診断した症例について報告を依頼した。報告対象は, ①起炎菌がC. aurisと確定, またはカンジダ属が分離されているがC. aurisと同定されていないC. aurisを疑う侵襲性感染症(血流感染症等)の事例, ②起炎菌がC. aurisと確定, かつ, 薬剤感受性試験でフルコナゾール, アムホテリシンB, エキノキャンディン系抗真菌薬のいずれかに耐性を示す局所感染症(外耳道真菌症等)の事例である。症例を探知した医療機関は, 最寄りの保健所へ連絡し, 管轄保健所が厚労省および国立感染症研究所(感染研)へ報告を行う。確定例は質量分析法または遺伝子検査により同定された症例と定義しているが, 質量分析法では誤同定される可能性が否定できない7)。そのため, 保健所等に分離菌確保・送付の協力を依頼し, 感染研にて遺伝子検査等による確認を実施している。また確定例は, 国や自治体が調査票等を用い症例の特徴を把握し, 対策に活かすことが想定される。

 

想定される施設内アウトブレイク対応
C. aurisは, 人の手を介した直接的な接触感染や, 環境表面を介した間接的な接触感染により伝播する。探知次第, その探知例との接触が疑われる人へのスクリーニング培養検査と施設内感染対策を実施する。スクリーニング培養検査は, 検査対象のうち52%が陽性となった報告もあることから8), 保菌者を含めた拡がりを把握するために重要である。検体採取部位は, 海外のガイダンスでは主に腋窩や鼠径部が推奨されているが2,9), 研究では, 鼻腔および手掌・指先が他の部位より分離頻度が高いとの報告もあり10), 資源等に応じた検体採取部位および対象範囲の検討を行う。施設内感染対策は, アルコール手指消毒薬による職員の手指衛生の徹底等の標準予防策に加え, 患者・保菌者の原則個室隔離や物品の専有化を含む厳重な接触予防策を実施する必要がある9)。接触予防策の解除については, 保菌者のスクリーニング検査において3回連続陰性が確認された後に, 再び菌が検出されたものは8%程度しかなかったという報告があるものの11), 国内外で明確な方針は定まっていない。また, C. aurisは環境表面で長期間生存し12), 体温計等の医療器具やベッド柵といった様々な環境からの分離が報告されているため3,11), 有効とされる薬剤(エタノール, 次亜塩素酸ナトリウム等)を適切に用いた環境消毒が重要である9)。加えて, 中長期的にみた抗真菌薬の適正使用や, 院内外へのコミュニケーションも対応の重要な要素である。